大山咋神とは

大山咋神とは:おおやまくいのかみとは

大山咋神とは、「オオヤマクイノカミ」と読む、男神です。次のような特徴があります。

  • 京都と滋賀の県境にある比叡山(日枝山)に宿る山の神として信仰されてきた地主神
  • そのため、本来は、国土開発・農耕守護の神
  • 比叡山の延暦寺の鎮護神としての役割もある

次に、大山咋神とはどのような神様か、詳しく説明していきます。

大山咋神とは:古事記や神話

大山咋神とは、神話伝承の中では、主に次の2つで登場します。

  • 「古事記」:奈良時代初期の712年頃
  • 「山城国風土記」逸文の賀茂縁起の「丹塗矢伝説(にぬりや伝説)」:奈良時代初期の713年頃

「古事記」では、「大国主の国造り神話」の最後に記されており、次のような神様です。

  • 須佐之男(スサノオの孫)
  • 比叡山(=日枝山、京都府と滋賀県の県境)や、松尾山(京都市の西側)を支配する神様
  • 鳴鏑(めいてき、鏑矢、かぶらや)を御神体とする神様

「山城国風土記」では、丹塗矢伝説の中で描かれており、「丹塗矢(にぬりや)」とは、赤く塗った「鏑矢(かぶらや)」のことです。また、「鏑矢」とは、音のなる矢のことです。丹塗矢伝説では、次のように記されています。

  1. 大山咋神は、水源の山の霊
  2. 大山咋神は、矢となって、玉依姫命(タマヨリヒメ)のもとを訪れ、結婚する
  3. 子供として、賀茂別雷命(カモワケイカズチ、京都の上賀茂神社の祭神)を生む

なお、「丹塗矢伝説」は、古代農耕祭祀を象徴しており、矢に化身した「穀霊」である大山咋神と、それを祀る「巫女」である玉依姫命との、「神婚の秘儀」と「新しい穀霊の再生」を表しています。

以上のように、大山咋神とは、矢に変身するため、豊穣神としての性格を持っています。

ちなみに、古事記にも「丹塗矢伝説」と呼ばれる伝承がありますが、古事記の丹塗矢伝説は、大山咋神とは関係ありません。古事記の丹塗矢伝説は、「大物主(おおものぬし)」や「大神神社(おおみわじんじゃ)」や「三輪山(みわやま)」にちなんだ神話です。

ただし、「大物主」も、「大山咋神」と同じ山の神様なので、似ている面はあります。また、比叡山の延暦寺では、大物主の分霊を勧請(かんじょう)して「大比叡」と呼んでおり、比叡山の従来の祭神である大山咋神を「小比叡」と呼んでいるため、比叡山では、大物主と大山咋神は、関連して扱われています。

大山咋神とは:大山咋神社とご利益

大山咋神とは、神社は主に次の2種類に分けられます。

  • 松尾社系(まつのお社系)
    • 松尾大社:京都府京都市西京区
  • 日吉神社(ひえ神社)・日枝神社(ひえ神社)系
    • 日吉大社(ひよし大社):滋賀県大津市。昔は、読み方は「ひえ」だったが、第二次世界大戦後は「ひよし」に読み方を変更している。
    • 日枝神社(ひえ神社):東京都千代田区永田町の官幣大社
    • 日枝神社(ひえ神社):山形県酒田市日吉町。日和山公園の近くにあり、日和山口の鳥居には、西郷隆盛による「日枝大神社」の額がある。
    • 日枝神社(ひえ神社):富山県富山市山王町。「富山山王さん」と呼ばれ、親しまれている

「松尾社系」は、「松尾神社」と呼ばれる全国各地にある神社で、「まつお」と呼んだり「まつのお」と呼んだりして、「松尾」を社名としている神社のことです。松尾神社の総本社は、京都最古の神社と言われる「松尾大社」で、こちらも「まつおたいしゃ」と呼ぶこともあれば、「まつのおたいしゃ」と呼ぶこともあります。

松尾社は、全て、大山咋神を祭神として祀っていますが、特に松尾社系の大山咋神は、酒造の守護神としても崇敬を集めているという側面もあります。そのため、京都の松尾大社では、酒造業反映祈願の祭りとして、11月初旬に上卯祭(じょううさい)というものが催され、全国から酒造業関係者が参集します。

「日吉(日枝)神社系」は、「日吉神社」や「日枝神社」と呼ばれる全国各地にある神社です。日吉・日枝神社系の総本社は、滋賀県側の比叡山麓にある「日吉大社(ひよし大社)」です。

なお、大山咋神は、神社だけではなく、仏教の天台宗とも関係の深い神様です。大山咋神と天台宗との関係は、平安遷都後の奈良時代末期である788年(延暦7年)に、唐から戻ってきた最澄が比叡山に延暦寺を建立し、天台宗を開いたことから始まります。最澄は、比叡山の滋賀県側の麓にある日吉大社を、唐の天台山国清寺の山王祠にちなんで「日吉山王」と呼びました。「山王」には、「山の神」という意味があり、日吉大社の神霊は、「日吉大社」は、「山王信仰」の中心ともなりました。

そして、仏教系の中では、大山咋神は「山王権現」「日枝権現」とも呼ばれ、天台系の寺院を中心にして、全国3,790社に勧請されています。

なお、天台密教では、鎮護国家、増益延命、息災といった具体的な霊験を、加持祈祷で実現するのを目的にしていたため、大山咋神も同じように国レベルで布教が勧められていきました。その結果、大山咋神の霊威は全国に広がっていき、実力派の神様として親しまれてています。

大山咋神のご利益には、次のようなものがあります。

  • 諸産業繁栄
  • 家系繁栄
  • 厄除け
  • 開運招福
  • 心願成就
  • 学業上達
  • 安産、など

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする